シンタロー

早春のシンタローのレビュー・感想・評価

早春(1956年製作の映画)
3.7
小津安二郎監督×池部良&淡島千景主演作品。杉山は蒲田から丸ビルに通勤するサラリーマン。共働きの妻・昌子とは、子供を病で亡くして以来、ギクシャクした倦怠期を迎えている。毎朝電車で乗り合わせる通勤仲間"のんちゃん"こと青木や、"キンギョ"こと千代らと、麻雀や飲み会で憂さ晴らししては、しょっちゅう帰りが遅くなる生活。そんな仲間達と江ノ島へハイキングに出かけることになる。昌子は夫の誘いを断り、五反田の実家でおでん屋をやっている母に日々の愚痴をこぼす。一方、ハイキングを満喫する杉山は"キンギョ"と急速に距離が近くなり…。
本来なら佐田啓二主演になりそうなところ、それではまるであの大ヒット作「君の名は」??だからなのか、東宝のスター池部良を迎えて、小津作品としては異色のキャスティング。夫婦の危機がメインだけど、戦後のサラリーマンの哀愁がユーモアたっぷりに織り交ぜられていて、深刻になり過ぎないところがおもしろい。それにしても無神経で優柔不断な杉山にはイライラした。こんな綺麗な奥さん相手に思いやりのない言動の数々。子供の命日忘れて泥酔した仲間連れてくるとか、ありえないでしょ。"キンギョ"に対する煮え切らない態度も最低。連発ビンタ炸裂には清々した。妻の家出、同期の早逝、理不尽な辞令…次々と直面して出した答え…ご都合主義と感じる方もいるだろうけど、自分は腑に落ちる感じがしました。
主演の池部良と淡島千景ですが、あまりにも美男美女過ぎて現実味に欠けるような…まぁ杉山役は池部くらい正統派じゃないと許されないかな…現代でも十分通用する甘いマスクです。芝居は小津演出に合わせたのでしょうか、かなり控え目。小津作品常連の淡島は安定の芝居と美貌。チクチク針で刺す感じがちょいと恐い。この時代の宝塚歌劇出身って、本当素敵な人が多いです。この夫婦に負けない美しさってことで抜擢されたのか?岸恵子は小津作品初登場。こちらは小津色に染まらず、喜怒哀楽はっきりした芝居の意外性がおもしろい。下手すれば尻軽に映りそうな役どころに品を保ったところが素晴らしい。昌子の母役・浦辺粂子や、お向かいの奥さん役・杉村春子がバイプレーヤーでいい味出してます。
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