フランコ

早春のフランコのレビュー・感想・評価

早春(1956年製作の映画)
4.6
小津の不倫モノ。『東京暮色』ほどではないがダーク小津。もちろん撮影も。あの妙に陽気な「サセレシア」って曲も出てくる。

この前、有楽町のデパートのエレベーターでほろ酔いな背広のおじさんと居合わせて、扉が開くなり「あっ!」とか言うから何かと思ったら外でチューしてるカップルに指差して「接吻してるなぁ」とか言ってて、この映画のキスシーンもそれに近い窃視性がある。あと冒頭の通勤シーンでうじゃうじゃと人が増えていって全員同じ方角へ歩いていき、最後は駅でホームから落ちそうなくらいギッシリと列を成し、ひまわりが太陽へ向くようにみんな電車を見るのとかも実におぞましい。

淡島千景「今朝パンよ」からの池部良「パンかぁ??」ってシーンとか、『麦秋』でも父が持ち帰った小包がレールかと期待して目を輝かせてた長男がパンだと知り憤慨して放り投げたり、小津作品ではパンを親の仇のように忌み嫌っているシーンが目立つが、これは小津が撮影技法としてのパンを嫌っていてのダジャレだったのか、と思ったり。。『麦秋』なんてレールvsパンって対立が明確だし。

2017/8/5 神保町シアター
フランコ

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