映画スニーカー図鑑

ワーキング・ガールの映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

ワーキング・ガール(1988年製作の映画)
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Reebok Clasic Leather (主人公:テスが着用)

今も昔も変わらず男性中心であるスニーカー史において、女性向けのプロダクトで最もダイナミックなムーブメントを起こしたのが80年代のリーボックだった。ジューン・フォンダのワークアウト・ビデオやオリヴィア・ニュートン・ジョン“Psysicul“のヒットなどに象徴されたエアロビクス・ブームの中、リーボックは横の動きに強い柔らかいレザーを使ったエアロビ用インドアシューズを開発、女性中心のブームのニーズを捉えた製品で、ナイキやアディダスを抑え米国で最も人気のフットウェア・ブランドに登り詰めていた。
88年のヒット作である本作の冒頭、スタテン島からウォール街までフェリーと徒歩で通勤する主人公:テス(メラニー・グリフィス)の通勤シーンは非常にアイコニックだ。ゴミゴミした都会をサバイヴしていくキャリアウーマンたちのいでたちは、超ボリューミーな髪型に肩パッド、そして足元のリーボックだった。テスはオフィスに到着するや否や、デスクに置いていたヒールに履き替えて仕事モードに入る。当時としては(特に、アメリカ国外の観客にとっては)コレが新鮮だったらしい。バブル期の日本のオフィス・ファッションにおいてもこの映画の影響は大きかったというが、スーツにスニーカーを合わせるスタイルだけは何故だか大して定着しないまま、2024年になった今も、就活中の女子大生はパンプスで足を痛めている。
映画自体はというと、エンタメ的完成度の高いシンプルな成り上がりサクセス・ストーリーであると同時に、男性中心社会への批判が忘れられた典型的な“女の敵は女”タイプの物語でもある。
そんな本作、ここ数年はセレーナ・ゴメス製作でのリメイク企画もあるらしい。リメイクするなら“女の敵は女”パートはサッサと済ませて、男置き去りのDIVA同士の権力抗争に重点を置いていった方が間違いなく面白くなるだろう(ドラマ『BEEF』みたいな)。キャスティング次第でいくらでも遊べる作品でもあるし、時代設定の脚色も楽しみだ。企画が実現したらもちろん、リーボックにも大々的にキャンペーンを張って欲しい。


衣装デザイン:Ann Roth (『バービー』のベンチの人だ)
登場・コラボ:登場のみ