半兵衛

男の世界の半兵衛のレビュー・感想・評価

男の世界(1934年製作の映画)
3.1
仲のよい幼馴染み二人が一人はギャング(ゲイブル)、一人は検事(パウエル)となり敵対する立場になっていく…というよくある犯罪映画のパターン。ただタイトルに「男の世界」(原題だとマンハッタンメロドラマ)と打ち出しているように、立場が違う二人が対立するのではなく二人は最後まで仲が良いしギャングが知事にまで出世しようとする検事のために犯罪を犯すという男の友情ドラマに。ギャングにしては悪党っぽくなくそのイケメンな顔立ちもあって鶴田浩二の侠客に近いキャラクターのクラーク・ゲイブルが友情のために手をくだす流れはもはやコテコテの任侠映画みたい。でも暴力の刺激を欲するギャング映画にはクラークの持ち味である品の良さとともに違和感が、キャグニーやボギーのような血の気のある暴力性が恋しくなってくる。

最初はゲイブルと、途中からパウエルと結婚したヒロインのマーナ・ロイにあまり魅力を感じないのもマイナス、特に終盤夫を救うために元カレと約束した行為があまりにも都合が良すぎるしそれに対してなんの葛藤もしないのでちょっとひいてしまう。

冒頭での船の事故で親を失った子供時代の主人公二人を引き取るのがユダヤ人という設定が意味深でドラマの重要なワードになるのかなと期待したのに、あまりドラマに生かされていないのが残念。

それでも主人公の子供の頃からの友人の間抜けなギャングや、ユーモアが効いた会話など随所に挟まる笑える場面が随所にあって結構楽しめた。一番好きなのはヒロインが警官に警察は女性に配慮すべきと文句を言うと、名もない警官が「それは間に合っている」と返すところ。

冒頭の船の炎上シーンはラオール・ウォルシュの『復活』を彷彿とさせる。

ラストでの検事と妻のやり取りは義理に生きたゲイブル可哀想じゃないと思えてくる。
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