明石です

ゴールデンボーイの明石ですのレビュー・感想・評価

ゴールデンボーイ(1998年製作の映画)
4.7
ホロコーストに魅入られた16歳の少年が、かつて収容所で人体実家をしていた元ドイツ人将校を脅し、ホロコーストについて洗いざらい聞き出す話。主演は元天才子役のブラッド・レンフロ。ブライアン・シンガーが『ユージュアル・サスペクツ』の次に作った映画。終盤まで全く飽きさせない緻密なストーリーにどハマりしました。私の中ではユージュアル以上の大傑作。

成績優秀でモテモテボーイの主人公は、ひょんなことから近所の老人がかつて収容所の署長だったことを知ってしまう。そこで老人の指紋を取り証拠を集めることで逃げられなくし「警察に突き出されたくないなら、ホロコーストについて全てを話せ」と脅すというお話。冒頭から狂気を感じて、ぐいぐい引き込まれました。とはいえ中盤以降はなんだかんだ少年とおじいさんの友情が育まれる話かと思いきや、むしろ逆。互いに人間らしい感情がなくなってくという鬱展開に。

少年はもともとサイコパス気味の隠れた問題児。ホロコーストに興味を持ったのもサディスティックな好奇心から。お爺さんにドイツ人将校のコスチュームをプレゼントして「これを着た姿を僕に見せろ!じゃなきゃ警察に突き出すぞ」と脅したり、飛べなくなった鳩をバスケットボールで潰したりと、かなり情緒の浅いケツの穴野郎笑。そしてお爺さんに毎日ホロコーストの話を聞くことで、雪だるま式に狂気が増していく。

そして元ドイツ人将校のお爺さんは、少年から昔の記憶を突つかれるうちに、かつて収容所で働いていた頃の悪夢が甦り、現実と妄想の区別がつかなくなっていく。中盤以降はお爺さんの方も(というかお爺さんの方が主に)狂っていっちゃう。猫をオーブンに入れて焼いたり(許せぬ)、自分をたかろうとしたホームレスを刺したり、そして少年を脅して死体の処理をさせたり。。

序盤から終盤まで隙のない展開にワクワクしっぱなし。そしてラストも文句なしの鬱エンディング、、素晴らしい。なんだか「深淵を覗くとき深淵もこちらを覗いている」というニーチェ先生の言葉をそのまま体現したような作品でした。容赦ない鬱展開に最後まで見るのは若干心が痛むけど、とっても好きな映画。

これまでSキング原作の最高傑作は『デッドゾーン』だと思ってたけど、本作により更新。原作の方は長いあいだ積ん読になってるので、そちらも読んでみよう。

——心に残る台詞——
「殺すという感覚はなかった。誰にも止められん。完全に麻痺していた。一度開いたドアは誰にも止められなかったんだ」
明石です

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