Hina

ゴールデンボーイのHinaのレビュー・感想・評価

ゴールデンボーイ(1998年製作の映画)
3.2
上映当初も、激しく賛否が分かれた映画だったらしいけれど、その原因は原作からの変更にあるんじゃないかなーと思う。

原作小説は、トッドもデュサンダーも、ホロコーストの記憶に侵されて、ホームレスを殺し続ける。という話であり、その行いをお互いに隠し続ける。というストーリーラインらしい。
つまり、ホロコーストという歴史的悪行が、その悲惨な影響力で簡単に人の心を支配し得る、それほどに強い悪であったと受け取れるようになっている。

でも、この映画を観た後には

「あー面白かった!」って思った後に、「…でも、結局何が言いたかったんだろ?ホロコーストの必要あった?デュサンダーが亡命してきたどこぞのマフィアとかでも、同じ話成立しない?」ってなる。

それは、ホロコーストという強い題材による、メインメッセージが成立していないからな気がする。

例えば、私の個人的で勝手なミスリードだけれど、途中の、トッドの成績がオールAに改善するところなんかでは、「ホロコーストみたいな辛い過去を越えてきたおじいさんだから、人に優しくできるってことか!」なんて思ってしまった。それは全く的外れな見方だったけれど、そう見えた人も多いんじゃないかと思う。
それだから、結局最後のシーンも、『確かに過去怪物であったけれど、どこかに優しさも持ち合わせていたデュサンダー』という人物像を持ってしまい、彼に同情すらした。

でも、それは見方自体が間違っていたのだろう。

この映画は、トッドも、デュサンダーも、もっと怪物であるべきだった。

尺の問題なのか、レーガノミクスの「家庭を大切に」という精神を引きずっていた90年代映画にありがちな優しさの配慮なのかはわからないけれど、結果として、

「おじいさんが死に、その生徒だった男の子はちょっと大人になった。でも残念ながら悪い大人だった。」みたいな意味のわからない終着をしてしまった。

原作では、トッドも最後は狂ってしまって、警察かなんかに撃ち殺されるらしい。

その流れであれば、万人の理解を、ちゃんとホロコーストの恐怖の方に誘導できたと思う。

スティーブン・キングの原作の恐怖に中途半端なブレーキをかけてしまったことで、何が伝えたかったのかわからないチープな騙し合いの映画になってしまった感が否めない。🥲

あーでも、悪口じゃない。笑
スリリングだし、ドラマチックだし、余計なこと考えなければ、ちゃんと面白い☺️
もうちょっと名作になったかも?って思ってしまっただけ。笑
Hina

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