jonajona

ゴールデンボーイのjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

ゴールデンボーイ(1998年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

アメリカの好奇心旺盛な中学生トッドが
身分を隠して住む近所のナチスの元将校を
見つける。トッドは強制収容所などに興味があって元将校の老人に黙っててやるからその頃の話を聞かせろ、と言う。
やがて昔話に耳を傾ける2人の時間は
狂気の色味を帯びてゆき…

この映画は人間の暴力性みたいなものを
炙り出してる。始めは話すことも渋ってた老人。『あれは間違いだった…』と言わんばかり、後悔の気配すらある。
しかし少年との命令と服従の主従関係に
組み込まれ当時を思い出していくうちに
彼はむしろ生き生きと『あの時の』
残虐性を取り戻していく。

それが決定的になる少年トッドの
プレゼントシーン。彼自身よほどかつての
ナチ将校を服従させてるのが気持ちいいのか当時の軍服コスプレを老人に強いると
いう狂気の沙汰に出る。
軍服姿で行進を命令された老人はここで
決定的にこの数十年アメリカで潜伏して
いた仮の顔を破綻させる。次第に
生気を取り戻して狂気を宿らせ、いやに
キビキビと行進しだす様は圧巻…


かといって、これは決してナチス戦犯の
罪のみを指摘した生易しい映画じゃない。
物語のラストではアメリカ人の主人公が
老人との交流を通じて自身の残虐性も開花させていき、彼の本性に気づいた教師に
脅しをかけるシーン。彼の後ろに
アメリカ国旗がたなびいている。これは
あのナチスの非人道的な歴史は何も途絶えたものではなくて、生き方次第では
このアメリカにも宿ることになる。
そういう警鐘が込められていると思う。
jonajona

jonajona