阪本嘉一好子

愛は心に深くの阪本嘉一好子のネタバレレビュー・内容・結末

愛は心に深く(1968年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

やっと、DVDが見つかったので、鑑賞可能になった。ポアティエの名作とされる、『いつも心に太陽を To Sir, With Love』『招かれざる客Guess Who's Coming to Dinner』などはあるが、50-60年のハリウッドの名画とされていないのは実に見つけにくい。 リマスターをして彼の追悼記念をやってほしいねえ。

『愛は心に深く』 という映画は初見だ。あらすじをざっと読んで、この話題に興味をそそわれたのではなく、一度も見たことがないものを観たかった。 しかし、最高のコメディーだと思う。最初ニューヨークの街から配送車が郊外に向かって走りオースチン家の自宅で止まり、牛乳を配達する。それを受けとるのがアイビー(アビー・リンカーン)という始まりだ。正直なところ、最後まで興味のある話ではなかった。アービーが秘書になりたいため家政婦を辞めるということから始まり、誰一人、アイビーの気持ちを考えるわけでなく、自分達の都合で困ったから何とか解決策をと考えるのが愉快。なぜ辞めるのと聞くが、フロリダじゃなければ、アフリカに行くのかと聞く、オースチン家の奥さん。金持ちの狭い世界で暮らしているから、考えられない発想で聞く。結局、アイビーはトラックでの不法カジノをやめたジャックと共にオースチン家をさってニューヨークに行くことになる。

このコメディ映画の苦笑いも含めて、笑っちゃうところだけを数箇所書いてみる。

しかし、このオースチン百貨店の社長である世帯主のフランク(キャロル・オコナー)は、アイビーは7年(?)も働いてくれたが、他に誰か家政婦を探せの一点張り。
娘のジーナ(ロリー・ピーターズ)と息子のティム(Beau Bridges)はアイビーにボーイフレンドを探すことから始める。その、最適な役がジャック(シドニ=・ポアチエ)と考える二人。ジーナはジャックとの話題に、公民権運動やブラック・パワー・ムーブメントやNAACPのことだけを使って会話と言えないようなアプローチをジャックに使う。アイビーにジャックが黒人だからカラーのことだけを(黒人か関係していること)話すと言われる。ジーナーは黒人の人を招いたことがないからだという。こりゃ、最高におかしい。でも、今でも他人種と交わったことがない人はこうアプローチするかもね。

そして、アイビーはどこから来たのとジャックに言う代わり、西インド諸島でしょという。ジャックは笑って、少し聞こえるんでしょと。この意味はアクセントがあるからどこの出身だとわかるでしょうと言う意味だが。アイビーは少しねと答える。 アイビーはまたおかしなことに、ジャックに西インド諸島のアクセントがあることは彼を悪く言う時の、一つとしていう。

ジャックはこの若いジーナとティムの『お節介』で何でも興味本位に行動する二人を懲らしめようとして、アスピリンを 麻薬のピルだと思わせ、ためさせてみる。二人は真剣になって試してみようとしてるからおかしい。悪いことなら何でもやっているよという感じのティムまでビビっているから愉快でならない。そしてジャックは水をもらって、これを口に放り込む。 頭が痛いからと言って。

私はティムが大好きだった。オースチン家においては『厄介者』『はみ出し者』扱いだが、こういう物事の考えで、ストレートに言葉を使える若者は当時で(も) (わからないけど)子供扱いされたのに違いない。 30歳だとか言うけど、親は『mess』と言う言葉を使って、まるで困ったガキだと思っているようだ。アイビーに夢中だったけどうまくかわされた経験もある。例えば、ジャックに『結婚してる』と確認した後は、いいえの返事に『ゲイか』と本人に確認する。そして、父親の経営するカフェでチップの小銭すらなく、ジャックに頼む。文無しだから、全てジャックが払うことになる。カフェでの会話は愉快。

嫌いなシーン:ジャックがアイビーを連れて、高級と言われる日本食のレストラン、『ピース』 に行くが、 最初、シースルーの女が出てき挨拶をする。酷いステレオタイプで、日本人の女性がジャックの横に専門に座って、ジャックに一箸一箸食べ物を口に入れて食べさせてあげる。ジャックとアイビーの後ろにはもう一人の日本人の女性が正座して何もせず座っている。当時、こういう日本のレストランがあったのかどうか知らないが、私はこういう偏見に苦笑いしたし、現在でも、日本女性は『サービスをする』 と言う価値観だけで考えられる偏見が残るのはこういう映画からくるのだと思う。まあ、それでいいと思っていれば別だけどねえ。
ジャックは軍で日本語を学んだらしく、『このかたにお酒をください』と日本語でアイビーの方をちっともみないで『このかた』を使う。この言葉だけをいうから、意味がわからず使っているなあという感じがする。笑っちゃうね。でも、古い映画だからねえ。それに、口に食べ物を入れてくれる女性に、『あなたは大変綺麗です』とかいう。アビーはジャックはこのようなサービスが好きなのねというと、自分はそう生まれてきたんだよと答えるジャック。でも、ジャックの住まいで、アイビーがジャックに 灰皿(皿?)を両手で丁寧に差し出すと、ジャックは『アイビーは日本人じゃない』と言い出す始末。

このレビューを書いていても独り笑いが止まらない。