半兵衛

薔薇の標的の半兵衛のレビュー・感想・評価

薔薇の標的(1980年製作の映画)
2.5
松田優作と組んでいたときからは考えられないゆるゆるな村川透監督のハードボイルド。主人公の舘ひろしが自分を罠にはめて刑務所へ送った黒幕を探すというハードな復讐譚だったはずなのに一人目を脅迫した時点でどうでもよくなり、昔の彼女や仲間とのやり取りがメインになるので若干イライラしてくる。そしてなぜか中盤敵対する暴力団の金を盗むというケイパーものになり、簡単に盗んだかと思うと金をめぐってのゴタゴタがゆるゆると展開し、いつの間にか最後は過去の事件の決着がつくというまっすぐに進まない物語が緊張感を削ぐ。映像や雰囲気は80年代らしいが内容そのものは日活時代のアクションに逆行している印象に、中盤麻薬の取引をするとき中国人を演じる草薙幸二郎のインチキ中国語のやりとりなどまんま日活アクションのノリ。

それでも仙元誠三のカメラワークと渡辺三雄による光と影が絶妙な塩梅で織り成す照明が素晴らしいので最後まで鑑賞できる。冒頭の銃撃戦での光陰が効いた画面の中を縦に移動する移動撮影が素晴らしく、それでいてちゃんと役者の芝居と息が合っているので生理的不快を覚えさせないのも見事。

『ブリット』を意識したカーチェイスも長いのでだれるが、石の階段を降りていく場面は必見。

ぶっきらぼうな舘ひろし、喋り方がまんま暴走族時代の本間優二など役者もそれなりに見所があるが、ほんの一瞬だけ出演する松田優作にすべて持っていかれる。あのインパクトは『その後の仁義なき戦い』のショーケンに匹敵する。

薔薇の標的のタイトルに『target』という文字を真ん中に置くというセンスがあまりにも80年代らしすぎて今となってはダサいとしか思えない。
半兵衛

半兵衛