けーはち

マディソン郡の橋のけーはちのレビュー・感想・評価

マディソン郡の橋(1995年製作の映画)
4.0
中年の不倫恋愛願望コッテリなメロドラマと言えばそれまでだが、主演メリル・ストリープの恋する女の情感たっぷりな名演で泣かせる名作。子供らが遺品の手記を読み進めて行く枠物語の形式で「母親の不倫話なんてキモい🤮」みたいに想定される批判点を先回りした語り口なのも巧い。世界を渡り歩くワイルドで知的でカッコ良い、中年主婦に夢を見せてくれるような男を監督自らが演じてみせるのもまた面白い。もはや当時65歳のイーストウッド、劇中で諸肌脱いだ肉体は齢の割に精悍とはいえ、皺も薄毛も目立つ。大雨の中の別離のシーンなど額に貼りついたスカスカのすだれ前髪が気になって仕方ないが、その分てらいや取り繕いはなく中高年のロマンスを全身全霊で引き受ける気迫を感じる。西部劇の時代から古典的な男らしさを引き受けてきた彼が「家族の幸福という一線さえ守れば、主婦が大恋愛して、それを胸に想い続けてたって良いじゃん」と言うテーマを描く。平凡な男たちは黙って頷くしかない(?)。