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明日を夢見てのtheocatsのネタバレレビュー・内容・結末

明日を夢見て(1995年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

ネタバレ
フェリーニ[道]の浅薄な焼き直しの様な印象

「道」では力技を見せ物とする大道芸人が主役。本作では映画俳優オーディションを口実に撮影料をだまし取るインチキ詐欺師が主役。

1950年代シチリア島を舞台に純朴な島民に俳優になれるかのような匂わせ文句でたらしこみ、有料撮影会で銭を稼ぎまくる詐欺師。

最初は何が主題かよく分からなかったが、徐々に撮影カメラの前だと秘め事隠し事をべらべらしゃべってしまうという人間心理がメインテーマのようだと気付き始める。

ヒロインは「道」においては知能障害の可哀そうな女だったが、本作ではヌードを男に見せて小遣い稼ぎをしている修道院の小間使い。

詐欺師が別の詐欺師に騙され、その窮状を救ったのが先の小間使い。
修道院を追い出された小間使い女には詐欺師にすがるしかなかったわけだが、お互いに男女の情を通じるようになり、一緒に撮影詐欺稼業を続けようとしたときに男の悪行が警察にばれてしまう・・・・


フェリーニの「道」のイメージが浮上してきたのは、男が刑務所に収監されている間、女は警察に保管されている男の車に住み続け暫く男を待っていたものの、とうとう精神病院に収容されてしまい(この経過場面の描写はない)、2年経って刑務所を出た男は女を探し求めるが、精神病院で再会した女は「白痴」となってしまっていた。という場面。

「道」では面倒くさくなって捨てた知能障害の女が一人哀れに死んでいった様子を後で知った大道芸人が悲しみにむせぶ姿がこちらにもさざ波のように伝わり泣けてきたものだが、本作に関してはいささかも感情の波が動かなかったのが大きな違い。

ラスト、男に残された本音を明け透けにしゃべる島民達の録音テープを聴きながら、島民たちをだました良心の呵責と白痴女をどうしてやることも出来なかった悲しみに沈む男の絵でエンドとなる。
そこはこちらも悲しめそうな場面ではあるが、それでも全体的な軽薄感のせいかやはり無感情のまま終わってしまった。

映画的な面白さは正直なかったが、無垢な人をだます罪深さは感じ取れたかな。

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