オレオ

桐島、部活やめるってよのオレオのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.0
(※ややネタバレを含むので、未鑑賞の方は注意してください)

学校社会の閉鎖性と人間関係の希薄さを、バレー部のエースだった桐島が部活を辞めることをキッカケに描いていきます。

桐島が部活を辞める ことがバタフライ・エフェクトとして働きます。同名映画が有名なこのバタフライ・エフェクトという現象ですが、辞書には以下のようにあります。

バタフライ効果(バタフライこうか、英: butterfly effect)とは、力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の系の状態が大きく異なってしまうという現象。 カオス理論で扱うカオス運動の予測困難性、初期値鋭敏性を意味する標語的、寓意的な表現である。

日本では「風が吹くと桶屋が儲かる」という言葉がありますね。
この映画ではまさしく 桐島が部活を辞める という、それ自体だとわずかな変化が、果たして学校社会全体のバランスを崩してしまう という、学校社会がいかに閉鎖的であるかを結果的に示す形になっているわけです。

しかし、1人の人間が部活を辞めるということだけで、全体に亀裂の広がるようなことはありえるのか。
これが第2の主題、人間関係の希薄さです。
つまり、彼らは本心でぶつかりあったりせず、上辺だけのコミュニケーションがすべてと思い込んでしまう。
だからカースト制度によって、人間関係を何となく推し量り、考えることをやめて、自分自身でそこに身を投じていくわけです。

学校は社会の縮図といっても、所詮は狭く、限られた空間でしかない。
物語終盤、屋上に集結した人たちを前に、映画部の前田がビデオを回すシーンがあります。
このシーンは非常に秀逸です。
レンズ越しに(観客にとっては、さらにスクリーンを通して)見る学生たちの姿は、どことなく滑稽で、彼らの情熱もレンズを通せば、ゾンビ映画 というエンターテインメントの素材に成り下がってしまう。
あれほど複雑に絡み合い広大に思えた彼らの関係性も、1枚のフィルムに収まってしまうほどに閉鎖している。
しかし、そんな神の視点に立つ前田もまた、我々観客にとっては映画の中の人物に過ぎないわけで、作品的に言えばここにおいて、二重のフィルターを通して世界観を見せることに成功している。

この映画には、青年期の学生のいじらしさと、皮肉な滑稽さと、大人になろうともがく懸命さという、学生の全てが詰まっています。
特に、山本美月の演技が素晴らしかった。背伸びする女子高生を見事に演じています。
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