ヨミ

桐島、部活やめるってよのヨミのネタバレレビュー・内容・結末

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

『サマーフィルムにのって』を観た後で良かった。『サマーフィルム』が全力青春映画であるなら、こちらは負の青春リアリズム。そして本作を観て『サマーフィルム』には教員の影がほとんど見えないことを認識した。

ずっと「めちゃくちゃいい」と聞いていたが、ようやく観れた。

秘宝系のひとが褒めていた記憶があったが、それもわかる。高校生活のすべては人間関係なのだ、という青春を謳歌するひとびとと、そこに関係のない前田(神木隆之介)一派映画部。
好きなひとに演奏してること見られたらラッキーとか思ってしまう吹部部長が特に良く、そういう自意識の肥大、すごくわかる。そして無意味だとわかっていても引退しないキャプテンも良い。高校生には高校生なりの内面がある。しかしそれはそれとして、みんな過剰なほど人間関係に引っ張られるのだ。
「ロメロくらい観とけ!」と言い放つ前田への共感と同時に襲いくる「おれは前田ではない」自意識。自分は映画を観ることしかないのだ。それでも「映画監督にはなれない」と言い放つ残酷さ。
むしろ「おれは曙だ……!」と思いながら観ていた。最初の方の体育のシーンで映っている巨漢がぼくだ。一度映れば儲けもの。前田一派や菊池(東出昌大)たちのような、種々の意味で青春に打ち込み、そして「映す価値のある一瞬」があったひとたちではない。あと太ってるし。ぼくは前田にも、菊池にもその友人たちにも、そして桐島にもなれないのだ。
ヨミ

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