無知A

桐島、部活やめるってよの無知Aのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
3.9
今作は、内容をスクールカーストの崩壊とまとめれば簡単だが、依存の危うさに焦点を合わせて考えれば、まさに現実的で恐ろしい話だと感じた。確かに、依存とまでは行かずも他者との関わり合いというものは、自分自身の形に大きな影響を与えるものだと思う。そう、自分自身が何者かを決めようとしても、周りからのイメージがそれを邪魔するなんてことはよくあると思う。正直、これは人によって違うのかもしれないが、私にとって今作は非常にリアルな内容だった。作中にて映る、ドラフトの結果を待ち続ける少年や、現実的な思考の映画少年の姿を見ていると、ぶれない芯の強さは大切だなと思う。今思えば、学生時代に輪から外れていた奴ほど、大人になってから意外にも大成しているように思うのは、こういうことなのかもしれない。

さて、感想はこの辺りにして、ここからは今作の魅力を述べたい。まず、一つ挙げるなら桐島という人物の謎である。本来、他の作品だと主人公になるであろう立ち位置の人物が、カメラで殆ど捉えられることなく、内情も語られない。よって、観客は他の人物から彼について推察していくことになるのだが、これによって生まれる解釈の幅、自由度は魅力的だった。

そして、登場人物と観客(カメラ)の距離感も絶妙で素晴らしい。ただ、近くに寄り添って説得力を持たせるのではなく、少し離れた距離感で物語を映すことで、良い意味でドライな風が作中に吹いていた。一見、各登場人物に寄り添ってはいるのだが、なんとも空虚な感じは今作特有のものだと思う。

総じて、話としても面白いが、見れば自分の学生時代や生き方について深く考えさせられる、影響力の強い作品だった。もしも、今作の名前は知っているが、見たことがないという方がいれば、是非とも観ることを勧めたい。特に学生時代に苦労した人には、ほぼ確実に何か刺さる内容だと思う。


(内訳)
面白さ 3.7
学び 4.2
構造 4.0
無知A

無知A