高校生活という小さく複雑な社会での葛藤を描く青春群像劇。原作未読。
高校3年生という人生の岐路に立たされる多感な時期に、バレー部キャプテンの桐島が突然部活を辞めたことをきっかけに、各部やクラスの人間関係に徐々に歪みが広がりはじめ、それまで存在していた校内のヒエラルキーが崩壊していく模様が秀逸。それぞれの階層のエピソードを色んな人の視点や感情を丁寧に何度も繰り返さることで対象的に構成され、終盤に交錯していく。
ラストシーンの屋上でこれまで交わることのなかった階層の生徒たちが交錯し、それぞれに抱え・積み上げてきたカタルシスが解き放つシーンは秀逸。現在・将来の不安や鬱積が混在してバランスが崩れ始める高校時代の葛藤を言葉以外で説明し、映画の真骨頂を大いに堪能。
スクールカーストが話題になっていたが、カーストが最重要ではないし、映画部の下克上でもない。映画部が最下層だけど、いじめにあっているわけでもないし、居場所はある。今好きでやりたい映画作成をしているが、将来の職業は別と理解して一番現実に向かいあっている。
むしろカースト上層の宏樹(東出昌大)が自分には何も無いことを悟り、全てが中途半端で桐島に最もすがっていたことを最下層の前田(神木隆之介)によって気づく演出も良い。
各エピソードは終盤に向けての前奏で屋上のシーンが焦点となる構成と考えるとわかりやすいと思う。
今現在の立ち位置やこれからの方向性について考えさせられる。
松岡茉優の演技と山本美月の存在感が際立っており今後に期待していたが、映画において松岡茉優は演技力は高いが配役選びや方向性が少し迷走中。山本美月は配役選びが下手で失速中で残念。
男性陣の神木隆之介と東出昌大は順調に成長。神木隆之介は媒体の垣根を超えた等身大の演技が秀逸。東出昌大は演技にムラがあるが雰囲気が良い役者に。
・2012年 邦画 作品:第1位