キノ

カンフー・パンダのキノのレビュー・感想・評価

カンフー・パンダ(2007年製作の映画)
3.9
食べ過ぎてパンダ体型となった人におすすめの贅肉賛美映画。

2024年に四作目が来るらしく、息子とDVD視聴。彼は満足げだが、序盤は集中せず、「君の場所じゃない」や鍼治療・秘孔は説明必要だった。何故勝てたか?(後述)も気づかなかった。一方私は、改めて脚本の完成度に驚く。初回は気付かないので、複数回視聴で味わい尽くせるタイプの作品。星3.9。

ラーメン屋のせがれが、龍の戦士を見たい(want to see)と親に打ち明け、弟子と認められ、龍の戦士に成りたいと決意し、アレ(ネタバレ回避)が彼を龍の戦士に変える。この物語だけで完璧さが分かる。例えば決意シーンも「脚本家に動かされて」ない。内心の「僕がなれるわけない」との自己否定と、それを打ち消すほど強い、マスターを信じる気持ちを丁寧に描く。本作キーワードの「師弟の信愛」が、他の場面でも、そして他のキャラたちにも積み上がるように描かれるため、完成度が際立つ。親子愛を超える「師弟愛」により最強になる。そのカンフー愛を感じた。過去のhistory と未来のmistery の間に、現在をpresent という言葉が好感。悟りきった老師が散るシーンも良かった。弟子を信じるを最後に示そうとする姿を、しっかり感じた。なんならSWシリーズの師弟エッセンスを超えてる。

さらにジャッキー系カンフー映画エッセンスも凝縮している。ファイブと悪役の吊り橋対決は最高。私は本作DVD特典を見て、動物の威嚇が、カンフーだと初めて分かった。武道の型や演舞は「舞踏」と思っていたが、実は無用な衝突を避けて自己顕示する武力演習・デモンストレーションだった。それを動物の「威嚇」から学んだのがカンフーだった。

で、ラストバトルで何故勝てたか?ですが、

↓(ネタバレ)


↓つまり燃えよデブゴン

秘孔攻撃の弱点が「贅肉」というのは、北斗の拳でも使われてた。本作でもマスター筋が使うツボ攻撃は武術の達人には効くので、ファイブには効果はテキメンだが、皮下脂肪が分厚いパンダには効かない。台詞には無くともここで「偶然などない」が観客に聞こえる。つまり、自分についた脂肪に意味がある。弱者賛美は多いが、贅肉賛美が本作。

そのゴール目指し、伏線を積み上げている。鍼治療シーンもそうだし、階段を転げ落ちても脂肪で平気というシーンは序盤とラストバトルで二回やっている。さらに序盤脚本で「こんなデブじゃ何にも無理」と、主人公にも観客にも思わせる(ただし欠点にもなっている)。この脚本のみならず、ラーメン屋で脂肪が邪魔で動きにくい演出や、打撃で波打つ脂肪の面白アニメでも、全てに渡って脂肪を描ききっているのが分かる。何故なら観客の脂肪を賛美するため。脂肪が必殺の秘孔攻撃に勝つから。

この脚本の完璧さを目の当たりにすると、もう一度聞こえてくる。

「全て必然」
キノ

キノ