けーはち

カンフー・パンダのけーはちのレビュー・感想・評価

カンフー・パンダ(2007年製作の映画)
3.9
擬人化された動物が中国風の舞台で功夫活劇を繰り広げるドリームワークスのアクション・コメディ3Dアニメ。ラーメン屋の息子🐼が突如伝説の「龍の戦士」に選ばれて何だかんだで強くなり、功夫の谷の危機を救う話。

中国武術を軸に往年の香港・功夫映画へのオマージュがそこら中に散りばめられ、形意拳のモチーフに用いられる動物(虎・蛇・鶴・猿・蟷螂)がそのまま師範級の強者マスターファイブとして登場したり、動物+アニメの誇張で100倍ぐらいに強化された功夫アクションは今見ても鮮烈で面白いが、全てを知るかに見えた師も万能ではなく、自分の非を認めつつ弟子の意欲を引き出してその個性に合わせた修業方法を工夫するなど、師弟共に成長する教育の寓話としてのストーリーも筋が通っている。マスターヨーダみたいな小柄の師匠はよく見るとレッサーパンダで、ジャイアントパンダの弟子🐼と2人合わせて掲題の通り『カンフー・パンダ』なのだと解釈できよう。

ただ、肥満で大食漢の主人公がのらりくらり修業を避けようとしてウザかったり、彼の意欲を焚き付けるため食物を文字通りエサにするのが下品で見苦しいとか、極端に強く描かれた最凶の敵に短期間の修業でアッサリ御都合的勝利を収めてしまう(体型や食い意地の悪さはサモ・ハンのオマージュだし、脂肪分が攻撃を吸収して打たれ強いとか、相手の強過ぎる力を利用する化勁という理はあるのだが)とか、ノリ切れない向きも理解できなくはない。「そもそも武術は人体の構造に礎を置くので動物が使うのは……」みたいな正論での文句は言い出すとキリがない。

競合の『ミニオンズ』のイルミネーション然り、ポリコレ優等生ディズニー・ピクサーが丹念に取り除いた臭味があるのがややもすると人を選ぶ強力な個性ではある。