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ローマの休日のhoshのレビュー・感想・評価

ローマの休日(1953年製作の映画)
4.5
BSで鑑賞。身分を隠したアン王女と特ダネを狙う記者ジョンのラブロマンス。オードリー・ヘップバーンの代表作にして世界的名作。

冒頭の女王の外交の場面から画面いっぱいに集まるモブたちの迫力に驚き、ローマの街並みの美しさとロケ撮影の説得力にうっとりしたかと思えば、特ダネを盗撮したいジョンと身分を隠したいアン、という身分偽装サスペンスが純粋なラブロマンスへと変化していく見事な脚本に唸らされる。各要素の充実とこんな話なんだ!という驚きで2時間飽きる暇がない。

その中でもいちばん素晴らしいのは終盤のジョンとアンが別れる直前の車内のシーン。アンの別れの言葉・ソロショット→ジョンのリアクションのソロショット→斜めからの2人の表情のショット→抱き合う2人を真正面から撮るショット。(ここで満を持して大音量でメインテーマ)
愛し合いながらも別れざるを得ない男女2人の重苦しく切ない空気と最後の愛のひとときを、切り返しのカット割りと画面に映す人数、役者の表情の変化というシンプルな要素だけで見事に切り取っている。心掴まれる演技と溢れ出る感情を的確に捉えたキャメラと演出。完璧としか言いようがない。これこそが映画だ!と膝を打った。

ラストも切ないけれど、離れ離れになったとしても特別な時間があったことに変わりはないという描き方が粋。本作はそんな刹那のように美しかった“”あのひととき“”を120分に凝縮して観客に味あわせることに成功しており、時間感覚を操れるという意味で実に映画らしい映画と思った。最高のラブロマンスにして完璧な傑作。今後も古びることはないでしょう。ローマ行きたい。
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