Hiroki

フィールド・オブ・ドリームスのHirokiのレビュー・感想・評価

4.1
だいぶ時間が経ってしまいましたがレイ・リオッタが亡くなりました。
レイ・リオッタといえば、マフィアなどのコワモテなんだけど何かしら心の内に秘めている男を演じさせたらピカイチ。
甘いマスクと青く透き通った瞳に吸い込まれてしまうような魅惑の演技。
スクリーンにいるだけで安定感が出て、その映画の価値を高めてしまう。
そんな稀有な役者でした。
もっともっと観たかった。無念。

R.I.P. Ray


『グッドフェローズ』はもちろん『ハンニバル』『ジョンQ』『リボルバー』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』などなど心に残っている作品はたくさんありますが、今回は初めて(たぶん)レイ・リオッタを観た作品を選びました。
主役ではないのですが、実在の“シューレス・ジョー”という人物を演じた彼のインパクトがとてつもなくて、スクリーンではなかったけどあの衝撃というのは今でも鮮明に覚えている。

今作は80年代の名作として非常に有名な作品ですが、物語自体はあまりストレートではなく、結構ファンタジー要素が強い。
よく売れたなーと。
ただこれは注釈があって、アメリカや日本など野球人気の高い国でのみヒットしたみたいです。
まーそりゃそうですよね。
現地アメリカでは2021年に実際にこのアイオワの球場(ロケ地の隣に新設)にて“フィールド・オブ・ドリームス”と冠した劇中にも出てきたホワイトソックスvsヤンキースの公式戦が開催されました!セレモニーには主人公レイ役のケビン・コスナーが登場して、両チームの選手は当時のユニフォームを着てライトスタンドのトウモロコシ畑から登場するという演出まであり、大いに盛り上がったようです。ちなみに今シーズンも8月に開催予定(今年はカブスvsレッズ)との事。

内容的には野球特にMLBの事を知ってるとより楽しめます。
まー知らなくても序盤で物語の鍵になる“ブラックソックス事件”について説明してくれるシーンがあるのである程度はついていけるはず。(劇中では「シューレス・ジョーは八百長はしていなかった!」と主人公レイは話しているが実際には明らかにはなっていなく、チーム勝利試合と敗戦試合でのデータ差から八百長を指摘している専門家もいる...)
主題となっている“何者にもなれていない自分”は現代にも通じる不変のテーマ。
家族のために働く事で毎日が手一杯になって自分の人生を生きられない主人公レイ。
そんな彼は謎の声に導かれるように野球場を作り、アメリカ中を旅して回る。
そしてかつて仲違いしたまま死に別れてしまった父親と奇跡の再会をする。
もーね、脚本的にはめちゃくちゃなんですよ。
ご都合主義のTHE映画的展開。
そして60年代くらいのアメリカ讃歌的な要素も入り乱れる。
「いやいやいや!」って冷たくあしらってしまえば簡単。
でもやっぱりそれは違うんじゃないかって思って。
なんかなーこれ熱量が凄いんだよなー。
途中レイがテレンス・マン(ジェームズ・アール・ジョーンズ)に同じような事を言われるけど、レイ同様に製作陣の熱量も凄い。
観ている側を「しょーがないから付き合ってやるか」って思わせる力がある。
これはたぶん作り手の熱なんだと思う。
往々にしてそーいうモノって画面越しでも伝わりますよね。
スクリーンで観てたらもっとあてられてたかも。

そして“シューレス・ジョー”のレイ・リオッタ、“テレンス・マン”のジェームズ・アール・ジョーンズ、“ムーンライト・グラハム”のバート・ランカスターという助演的な位置3人の演技がとてつもなく良い。
独特の間を使った吸い込まれるような演技のレイ・リオッタ。
偏屈な男だけど本当はチャーミングでコメディカルな演技の塩梅が絶妙なジェームズ・アール・ジョーンズ。
名優の晩年から滲み出る深みと渋みをサラッと感じさせる映画遺作となったバート・ランカスター。
全部良かった!

レイ・リオッタは新作『Dangerous Waters』の撮影のために滞在していたドミニカにて睡眠中に息を引き取ったとの事。
この新作はどーなるんだろうか?
もし撮影中だったのなら少しはレイ・リオッタの姿が見れたりするのかな。
なんとか少しでも最後に見れたら嬉しいですが...
期待しすぎず待ちたいと思います。

2022-51
Hiroki

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