Arts0001

フィールド・オブ・ドリームスのArts0001のレビュー・感想・評価

3.5
不思議なバランスの野球脳ムービー

過去に観た淡い記憶を辿って謎の声に導かれてこの映画を鑑賞。

いやー、不思議なバランスの映画でレビューが難しいです。

36歳になってから農業を始めた。という設定の時点でなかなかチャレンジングな主人公だと思ったが、謎の声に導かれるままに借金して作ったトウモロコシ畑を潰して野球場を作るという暴挙に出る。
奥さんは、本当にやるべきだと思ったのならやるべき!と応援する(マジかこの夫婦)

するとその野球場に死んだはずのプロ野球選手達が若返った姿で集まってきて野球を始める。

なんだこの話。。。というのが冒頭の感想。

そこからはさらに謎の声のふわっとしたヒントを頼りに遠方のおっさんに会いにいくロードムービーに移行する。

おっさんが仲間になり、次にお爺ちゃんを探しに行くシブすぎる展開になっていく。
これだけ書くと全く面白そうに思えない映画だが実はそうでは無い。

この物語は謎の声に導かれるままに行動することで登場人物たちの後悔や叶えられなかった願望を叶える展開になっていくところが心地よい。

主人公自身は父親との葛藤、おっさんは野球が見れなかった後悔、お爺ちゃんは野球選手として活躍出来なかった無念。
そんな想いが謎の声に導かれたことによって救われていく物語。

映画の最後。主人公が若かりし頃の父親と対面し、何を話せば良いか分からなくなるシーンがとても良かった。

上手く話ができずにいて、これでサヨナラか。。。と思いきや「親父キャッチボールしよう」と言ってキャッチボールを始める。

主人公は自分の親父を生活に追われて老いていっただけの人だと嫌い、大好きな野球も親父との決別からやらなくなり、最後には悪態をついて家を出る。
その後親父は死に、後悔に苛まれていた主人公。

このキャッチボールのシーンがそんな悔恨の念をゆっくりと溶かしていくような素晴らしい後味を残してくれる。

野球大国アメリカが産んだ野球脳ムービー!と言ってしまうと雑すぎるかもしれないけど、ちょっとスピリチュアルな作りのためなんとも不思議なバランスの映画に仕上がっている。

ただ、何か1つの競技を通じて人生の道筋や幸せを見つけることができるって素晴らしい。と感じさせてくれる一本ではあります。
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