悪魔の毒々クチビル

地獄の謝肉祭の悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

地獄の謝肉祭(1980年製作の映画)
3.4
金曜の夜はイラつく


ベトナム戦争の帰還兵が謎の伝染病で食人衝動が抑えきれず、街で人を襲い出すお話。


1980年製作のイタリア産ホラーです。
主演にジョン・サクソン。
プロットからして街中の人間が感染していってど偉いパンデミックを起こすのかと思いきや、意外と小規模な内容でした。
序盤で感染した兵士に噛まれた主人公ノーマンの、段々と食人欲求に目覚めていく中での葛藤なんかをメインに割と真面目な作風。
ただ丁度一つ前に投稿した「ハロウィン3」もそうだったんだけど、今作でもハゲなおっさん主人公が若い娘に誘惑される場面があって80年代って中年ハゲの全盛期だったん?と思ってしまいました。

一応ゾンビ映画の括りに入るのかもしれませんが、今作は狂犬病のようなもので感染しても食人衝動以外は基本的に変わらず。
なので後半はノーマンが感染源(?)となった部下二人と、たまたま噛まれて感染した医者を引き連れて逃走しますが医者のお姉さん以外は流石に戦闘慣れしているので、追跡してくる警察も上手いこと返り討ちにして既存のゾンビとは違ったハラハラ感はあるっちゃあると思います。

今作では「サンゲリア」を始めとしたフルチ作品で活躍したG・デ・ロッシが特殊メイクを担当しているだけあって、ショットガンで風穴が空いた腹部や電ノコで脚を切り落とす場面等ゴア描写は沢山って訳ではありませんが出来は良かったです。
あと映画館でいちゃつくカップルも、彼氏が彼女の乳首に吸い付く所をしっかり映していて抜かりが無かったですね。

劇中の音楽はたまに70~80年代のホラーで流れるような、無駄に気の抜けたような曲調でオープニングのベトナム戦争シーンや後半の主人公ら感染者御一行の逃走シーンの緊張感を綺麗に削いでいました。当時のセンスってよく分からないわね。でもラストの音楽はまぁまぁ好きです。

最後は全然丸く収まってないんだけど、ノーマンが妻だけは襲わぬ様に自制し続けてからのあの展開は中々切なかったし、ラストで案の定何も解決してないよねなカットになってやはり真面目にホラーしていた印象でした。
思っていた内容とは違ったんだけど、個人的にはアリな作品でした。

余談だけどジョン・サクソンって「燃えよドラゴン」でブルース・リーと共演して以来、ずっと彼の印象ばっか周りから聞かれてうんざりしていたらしいんだけど、一度街で暴漢に銃突き付けられて「ブルース・リーってどんな奴だったんだ!?教えてくれよ!!」って脅されたって言うエピソードがあるとの事なんだけどマジですか。