shishishi

白夜のshishishiのレビュー・感想・評価

白夜(1971年製作の映画)
5.0
「手の作家」としてのブレッソンを楽しむ映画として一番間口の広いものなのではないか?であるにも関わらず、見る事がなかなか困難なのがとても悲しい。

二人の出会いと別れ、という端的な単位の出来事が、画面の運動で語られてゆく次第であり、画面に目を凝らせ、という要求にさえ応えてさえゆけば、何が起こっているのかは誰にでも"わかる"。

1ショット目からもう手の運動で始まる。
第一夜で描かれる、女が自殺を踏みとどまるシーン。ここでもやはり、手によってそれが起こる。映画はそれ以上の"理由"がなくともその運動がゆえに進みゆく媒体なのだと量子力学の理解を試みるが如く、暴力的に受け入れる他ない。
また恋人同士が触れ合うショットで、お互いのどこに手を置くのか、といったまさしく弄り合いも、ほのかにコメディで大変愉快なのでよく見ておくべし。
劇中で登場するB級ガンアクション映画もブレッソン自身で撮っているのだが、かなりシニカルで白々しい演出をしている。が、やはり手のせいで面白い。
二人の絶頂もまた手で起こる。二人が酒を飲むテーブルの下、というアングルのせいもあってエロく、すんごい盛り上がりを見せるやんごとなきショットなのだが、そこに映り込むアイツ。ヒッチコック「ハリーの災難」でもなかなかの図々しさでキスシーンを邪魔したアイツ。一体ブレッソンがどこまで計算していたのかは分からないが、こんなショットをしれっと撮れてしまうんだからスゴい。

手、以外にも特筆すべき面白い部分は多く、男が女に惚れてどうしようもない、という様子が、単語の過度な反復によって描かれもう抱腹絶倒である。
また不意に、なかば劇伴的に流れてくるポップミュージックや、ポンヌフの下を通る船など、とても粋な登場をみせる。

本当に楽しい楽しいブレッソン映画なのでどうにかしてみんな見て。
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