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白夜のpikaのレビュー・感想・評価

白夜(1971年製作の映画)
4.5
こんな面白かったっけ!?前回もめちゃくちゃ楽しんだけど今回はもっと楽しかった。
「白夜」を原作にした映画を3作品見た時は原作を読んでいなかったのでそれぞれの個々の魅力を楽しんだり映画の比較をしてみたりしただけだったが、今回は読んだ後に原作からどう広げたかを意識して見てみた。
ストーリーがドラマチックながらもとてもシンプルなので演出に重点を置ける魅力的な題材なんだろう、原作になぞらえたりアレンジしたり独自の解釈で表現したり汎用性があるから監督の個性が出る気がする、と思うくらい同じ小説を原作にしながら「白夜」の映画は多様に思う。

オープニングから度肝を抜かれて笑った。原作のオープニングはめちゃくちゃ印象的でそこだけでも読む価値あるくらい惹きつけられ、文字が頭の中で映像となり音が聞こえ匂いさえ香る素晴らしい書き出しなんだけどそれをこんな風に映画にしちゃうのかと。ブレッソンの個性も原作の魅力も同時に楽しめるめちゃ楽しいシークエンス。興味のある方は是非原作を読んでから見て欲しい。
ドストエフスキーの醍醐味たる一人称の長広舌語りをブレッソンの距離の空いたドライな演出で見ると、原作に忠実と思うくらい同じことを描いて見せているのに全く違うアプローチで表現されていて、芸術家の手法の違いがダイレクトに見れるという点で超面白い。

本人にとっては日常的でごく普通のことでも外から見るとキモいってのがめちゃくちゃ笑える。内面で完結していることが表に出るとどうなるのか、その場にいて対面している本人じゃないと気づかないくらい些細な仕草から滲む感覚を画面の外で見ている観客が感じ取れるまでに浮かび上がらせているのか、ブレッソン凄いですね。見るたびに、見てハッと気づいて考えるほどに痺れます。

2016/10/28【1回目】
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