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Kids Return キッズ・リターンのmitakosamaのレビュー・感想・評価

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)
4.8
爽やか青春映画と見せかけた絶望映画。希望があるように見せかけて実は一切無いという仕掛けで終わる。すっごいよな。本当になんて映画を作るんだよ。

バイク事故後ということもあり、たけし本人が出演しない数少ない映画だが、それ故に他の俳優陣が輝いているわ。
主演の金子賢(マサル)と安藤政信(シンジ)がまだド新人だった頃の起用で、まさにダイヤの原石だった。
今は二人ともそれなり成長したけど、この頃はオドオドして純情だったのが演技に出てるもん。それを見越したキャスティングの見事さよ。

落ちこぼれの高校生マサルとシンジ。ケンカの行きがかりでボクシングを始めるがマサルだけが才能を見込まれる。
マサルはここでも落ちこぼれヤクザに。シンジはまーちゃんとツルみたいだけなので寂しくて、ボクシングもダメにする。

落ちこぼれのマサルがヤクザになって調子に乗るのも如何にもな感じ。絵に描いたように転落して、一人前のヤクザにもなれず。
シンジは寂しくて、先輩のダメボクサーの誘惑に負けて酒や不摂生の日々。
結局ダメな奴は何やってもダメという残酷な現実。

このシンジを誘惑するダメな先輩がモロ諸岡。スッゲーいい味だしてる。超可笑しい。こういう奴いるわ〜〜〜〜。

さらに並行して展開される物語に、平凡なサラリーマンからタクシー運ちゃんになったヒロシ。好きな子と結婚するが仕事が辛くいつも陰鬱。
高校のころから漫才をやってた2人組。プロに成っても鳴かず飛ばず。
マサルとシンジと同じように、彼らにも容赦なく残酷な現実に見舞われる。

ポジティブに「まだ始まっちゃいねぇよ!」という二人には、この後も厳しい現実のみが待っているという、本当に生殺しな映画なのだ。

そして久石譲のサントラの素晴らしさよ。高揚感あるテーマ曲を背景にシンジがランニングをするシーンの格好良さよ!
奴らはダメ人間かもしれないが、そんな人生の中で一瞬輝く火花の美しさ、これがこの物語の最大の魅力なのだ。最高だね。
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