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白痴のGTのレビュー・感想・評価

白痴(1999年製作の映画)
4.5
 原作は坂口安吾。短編小説のようだが本映画は2時間を超える大作である。
 戦時中の日本が舞台。主人公の伊沢は貧民窟のような荒んだ環境に身を置きながらテレビ局の演出助手として働いている。映像制作の夢を持ちながら挫折し無気力な日々を送っている中、隣人の妻が家に無断で侵入。彼女は「白痴」と呼ばれ、そこから奇妙な同棲生活が始まる。というのが大筋と言えば大筋なのだが、この映画には異様な設定と映像のオンパレードで一体何を見せられているのか、となるタイプの作品だ。
 まずなんといっても、設定が戦時中なのにテレビ局の内部は非常に近未来的で、現代と過去が入り混じったような非常にチグハグな世界観なのだ。テレビ局の中では「銀河」と呼ばれるアイドルが絶大な力を持っており、お偉いさんたちも彼女に気を遣いまくりという妙に生々しい設定が展開される。テレビ局内の毒々しく軽薄な華美さが見事。資本主義社会の成れの果てという感じ。多分、その薄っぺらな華美さと対称になっているのが白痴の女なのだろうと思う。
 シュルレアリスティックな美しさがこの映画のウリなのだろうが、CGを使いすぎてなんとなく安っぽく見えてしまうシーンも多かった印象。テーマみたいなのものは見えそうで見えなかった。坂口安吾の原作を見てから、もう一度レビューするべきかもしれない。
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