西東京

拳銃を売る男の西東京のレビュー・感想・評価

拳銃を売る男(1953年製作の映画)
5.0
船の底から屋上へ、そして転落。ロッセリーニのネオレアリズモ的な崩壊したイタリアの街の中で、擬似親子の逃避行。めちゃくちゃ面白い。
船に乗りたいのに拳銃が売れない、ミルクを買いたいのにビー玉を買い戻されない。戦後の資本主義社会で、資本のない者に居場所はない。その社会の残酷さは、警察に追われて廃墟や地下を逃げ回る姿として表れる。戦争で生き残れても堂々と街を歩けず、力持ちなだけの拳銃を持ったジジイは死ぬしかない。女は洋服欲しさに上司に身体を売る。身体を資本とすれば生き残れるが、その虚しさはノワール的な陰影で傷だらけの顔を覆う。母親の「見ちゃダメ!」「考えちゃダメ!」という台詞で抑圧。ラストカットの背景でミルクの取引。完璧。
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