SatoshiFujiwara

拳銃を売る男のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

拳銃を売る男(1953年製作の映画)
3.7
新文芸坐シネマテーク

何やら廃墟的な雰囲気を漂わせた建物を浮浪者の男と少年がうろつき回るシーンがどうしたってロッセリーニの『ドイツ零年』を連想させるが、ロージー作品中では明らかにネオレアリズモ的な語り口を感じさせるのが面白い。

または序盤でこの両者がそれぞれパンと牛乳を盗むイタリア場末の町並みは何となくアレクサンドル・トローネルの手になるカルネの『霧の波止場』のセットを思わせる。『拳銃を売る男』はロケ撮影(美術はアントニオ・ヴァレンテ)。この時点でヴァレンテ(≒ロージー)とトローネルの直接的な関係を裏付ける資料があるのかは知らないし、ネオレアリズモと詩的リアリズムは相容れなかろう。

しかしずっと後年、最晩年の大・変態作(笑)『鱒』でロージーは『拳銃〜』の撮影監督だったアンリ・アルカンと再び組んだのだが、この『鱒』の美術はトローネル。『拳銃〜』前後から『鱒』に至るロージー/トローネル/アンリ・アルカンの交流は? 裏の映画史をあれこれ想像するのは楽しいもんです。
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