デニロ

千羽鶴のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

千羽鶴(1953年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

有楽町で若尾文子の特集を上映しているので、シネマヴェーラ渋谷の新藤兼人特集の本作も若尾文子が主演だと思っていた。タイトルロールで、木暮実千代、森雅之と出たので、おかしいな、でも若尾文子版も新藤兼人脚本だったので、ああ、面倒くさい、ド勘違いと思いながら見入る。

鎌倉の静かなお寺の佇まいが遠景で写される。着物姿の若い女性ふたりと森雅之がフレームに入っている。森雅之がそのふたり連れにお茶会の場所を尋ねる。ふたりもお茶会に向かうところだという。そのうちのひとり木村三津子は知らずに森雅之と見合いを仕組まれている。そのシーンの木村三津子を観てわたしの勘違いも報われる。何しろ美しい女性なんです。

美しいといえば、劇中に映される日比谷辺りの街中を歩く人たちの佇まいが穏やかで美しい。1953年の東京は整然としていて清潔感が溢れている。会釈する仕草など今や見ることはできない。交わす言葉も気品があって何だか気持ちいいのです。落ち着いているなあと思います。そんな美しい部分だけを切り取ったとも思えないほどです。

『千羽鶴』等と意味深長なタイトルだが、中身は杉村春子の独壇場。積年の恨みつらみを一気に晴らすべく本能のままに動き回るサイコパス。復讐を果たしたと思いきやその形見の品にさえも敵意をたぎらせる。聞き耳を立てた障子向こうの影から杉村春子がすっと現れるシーンなど吉村公三郎の演出と宮川一夫の撮影が見事だった。

木暮実千代の演じた薄気味の悪いおんな丸出しの太田夫人を、1969年若尾文子が演じている。それもいつか観たい。

1953年製作公開。原作川端康成。脚色新藤兼人 。監督吉村公三郎 。
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