暴力と破滅の運び手

男の魂の暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

男の魂(1935年製作の映画)
4.5
ニューヨークとブルックリンの間をつなぐためのトンネルの掘削場は「モグラ窟」と呼ばれ、高圧空気で無理矢理穴を支えており水が漏れたりしたり火事が起きたら全てが終わりという悪環境の中、ニューヨーク側から掘っている男たちとブルックリン側から掘っている男たちは反目しあい、稼ぎのすべてを「どちらが勝つか」の賭けに注ぎ込んでいる。ブルックリン側ではリーダー・ジャンボが二番手のショッカーとともに穴を掘削している。絵描きの女が地下鉄の出口で気圧差による眩暈を起こしたモグラの一人を助けているとジャンボ一行が通りがかり、女はジャンボの恋人が経営する酒場でトンネル掘削についての状況を共有される。女は新聞記者になりトンネル掘削の取材をしているうちショッカーと懇ろになるが、ブルックリン側のトンネルで火事が起き、ショッカーは断固として掘削を続けようとするジャンボの頭を殴って昏倒させ、全員を脱出させる。真相を知ったジャンボはショッカーを首にすると息巻いていたが、今度は浸水が起き、ジャンボは中に置き去りにされたショッカーを助けようと中に戻る。無事地上に出た二人だが、ジャンボは意地からショッカーと気圧に身体を慣れさせるためのポッドへ同乗することを拒否し、やがて「気圧差による麻痺」が発症し、ジャンボの代わりにショッカーが仕切ることとなる。トンネルが繋がり、ショッカーはジャンボを招き寄せ、ニューヨーク側のリーダーとのステゴロ対決が始まる。
上半身裸の男がたくさん出てくるが一切エロチックな感じがせず、逆説的に「ベン・ハー」がクィアネスの産物であるということを思った。
「トンネル内でなんか起きる→地上から水面に上がる泡を観察していた女たちがあたふたする」という流れのテンポの良さがすごい。トンネル内部の様子はとにかく凄まじく、ほとんど鬼軍曹が滋野行軍をやる戦争もののフォーマットで語られている。きちんと新入りも死ぬ。
最後の「穴をどっちが最初に潜り抜けるか」競争で思いっきり下からアッパーカットをやり続けていて、フェアネスとかまるでない感じでよかった。