Omizu

偉大な生涯の物語のOmizuのレビュー・感想・評価

偉大な生涯の物語(1965年製作の映画)
3.5
【第38回アカデミー賞 美術賞他全5部門ノミネート】
『陽のあたる場所』『ジャイアンツ』などの巨匠ジョージ・スティーヴンスの歴史大作。アカデミー賞では美術賞、衣装デザイン賞、撮影賞、作曲賞、視覚効果賞にノミネートされたがいずれも受賞は逃した。

アメリカでは240分で公開されたが、日本では199分版か141分版しか観られず、オリジナル版は未だにリリースされていない。

日本で観られるのは短縮版と言えど、それでも3時間20分…長かった。でもなるほど確かに巨匠ジョージ・スティーヴンスの腕は確かで、今までのどのキリスト物語より飽きずに観られたかな。

確かなストーリーテリング能力に骨太で叙情的な演出はさすが。ムリに全てを語ろうとせず、主にキリストの布教と奇跡、ユダの裏切りに焦点を合わせることで中途半端にならず成り立っている。

やっぱり改めてみるとキリストはあまりに正しすぎて狂人にしか見えず、ユダにかなり感情移入してしまった。でもたぶんそれは狙いだろう。ユダの描写が特に力が入っているように見える。

ユダはけっこう散々な目に遭っている。愛する人の近くにいるのに、やることなすこと否定されて、褒められるのは他の人ばかり…ってそりゃグレるわな。

あとこんなこと言ってもしょうがないんだけど、ユダに裏切らせる意味って何?あんなに噂になっているのに顔も知らないってちょっとおかしいよね。偉い人たちのメインの議題になっているのに誰も顔を知らないってちょっとあり得ない…

あと誰を恩赦するか?で声の大きさに差があるようには思えない。信者はたくさんいるんだから全員で声を上げれば圧倒でしょ。

まあそれはいいんだけど。

キャストは無駄に豪華。キリスト役はベルイマン作品でお馴染みのスウェーデン人俳優マックス・フォン・シドー、洗礼者ヨハネに『ベン・ハー』のチャールストン・ヘストン、ヘロデ王に『シラノ・ド・ベルジュラック』ホセ・フェラー、聖母マリアには『紳士協定』ドロシー・マグワイアなど。

そして一言も発さないにも関わらず一瞬で目を奪われるのは『野のユリ』シドニー・ポワチエ。ルックスも役柄もイケメンすぎて惚れる。

まあ題材に興味がそんなにないのでこれくらいだけど、かんりよくできている方だと思う。この時代、もしくはこれより前の『クォ・ヴァディス』とか『聖衣』とかのヘッポコ歴史大作より数十段上。さすがジョージ・スティーヴンス。
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