櫻イミト

偉大な生涯の物語の櫻イミトのレビュー・感想・評価

偉大な生涯の物語(1965年製作の映画)
3.5
「シェーン」(1953)のジョージ・スティーブンス監督×「アラビアのロレンス」(1962)のデヴィッド・リーン監督によるイエス・キリストの伝記映画。オールスターキャストの超大作。ベルイマン監督作の常連マックス・フォン・シドーがイエス役でハリウッドデビュー。

※本来260分の作品だが現存ソフトは197分編集版のみ。

イエスの伝記映画(聖書映画)は十数本観てきたが、映像は本作が最も素晴らしかった。それまでの大作史劇にありがちなスペクタクル性は排され、大スケールの画も落ち着いたトーンで捉えている。自然光の陰影を活かしたロケーション描写は宗教画のように美しい。二人の巨匠監督とオスカーに2度輝いた撮影監督ウィリアム・C・メラーが本気で取り組んだのが伝わってくる圧巻の映像が続く。

本作の特徴はイエスの起こした数々の奇跡を、神秘的には描き過ぎず、強い信仰心の結果とも解釈できるように描いていること。その点では、ベルイマン作品で無神論者を演じていたマックス・フォン・シドーは適役だったとも言える(逆にカトリック信者にとっては物足りなさが残るかもしれない)。第一部のクライマックスに置かれた”ラザロ蘇生”のシーンは、あえてロングショットと目撃した人々の感動の表情を切り返して描いているのだが、それが途轍もなく感動的で、”信仰の力”を示す最適解の表現を観た思いがした。本作はもとより最近見た映画の中でベスト・シーンだった。

このシーンで本作のテーマは描き切ったとも言え、そのためか第2部(エルサレム入城~磔刑と復活)では上回るものは見られなかった。終盤は息切れしたかのようにテンションが落ちていき、一言だけカメオ出演したジョン・ウエインの浮いた演技も悪目立ちしていた。本作のロケはモニュメント・バレーがふんだんに登場するが、今回は彼だけが場違いだった。
櫻イミト

櫻イミト