kekq

渇望のkekqのレビュー・感想・評価

渇望(1949年製作の映画)
3.7
いつまでも満たされない渇きを抱え続ける女と男。物語と心理描写の濃密さがすごい。あと初見でのわかりづらさが半端ない。

小説であればテキストで解説してくれる状況や心情を、すべて会話と映像で表現してこようとする。時間がどのくらい飛んだのか、ここはどこなのかもかなり難しく、今映っているのが新しい登場人物なのかどうかもけっこうわからない。油断していると重要人物とあり得ないタイミングで再会したりもするので何が夢で何が現実かもよくわからない。
基本的に全員情緒が不安定すぎて会話もだいたい破綻しているので、感情が物語を追う手掛かりにならないのもなかなか厳しい。

とはいえ、がんばって理解できればこの映画は相当に深い。満たされない人間は自分を絶対に満たせない人間としか寄り添うことができず、強く求め続けるが蜃気楼のようなイメージしか持てない「幸福」に手が届くことはない。
虚無的で刹那的な思想と生きざまがかなり重層的に描かれており、登場人物全員が主役のような強い存在感の群像劇が完成されている。

わけがわからないようでかなり研ぎ澄まされたコンセプトの映画。人生ってこんな感じだよなと妙に痛感させられる。
kekq

kekq