青二歳

オルフェの青二歳のレビュー・感想・評価

オルフェ(1999年製作の映画)
4.2
“黒いオルフェ”はファヴェーラを舞台にしながら本当のファヴェーラ(ブラジルのスラム)ではない、カーニバルも本物とは違う、と同じ戯曲を原作にして製作されたブラジル人による“オルフェ”。
主人公は詩人でありミュージシャンで、リオのカーニバルではチームリーダーを務め、チームの連続優勝が期待されている天才ミュージシャン。恋人がいながらユリディウスと恋に落ちるのは“黒いオルフェ”と同様であるが、彼女を奪う者は象徴的な死神ではなく麻薬売買にかかわるマフィアである。この圧倒的な暴力。前作が前衛的表現の不条理なら、こちらはブラジル社会の暗部による理不尽が二人の愛を奪う。
オルフェはそのマフィアを襲撃するのだが、まさに暴力に満ちたマフィア映画を観ているような息苦しさを感じる。“オルフェ”を観ると確かに“黒いオルフェ”は表象が多くてエキゾチシズムが強く、リアリティを求める作品でないことが分かる(いい悪いでなく)。
また音楽もボサノヴァのほかにラップやファンクを取り入れていて、ブラジル人の跳ねるようなリズム感が溢れてくる。再現されたカーニバルは圧巻。素晴らしい。ファヴェーラの貧困と理不尽な暴力をオルフェの悲恋になぞらえて映し、また一方でその理不尽に耐えながらも生命力あふれるファヴェーラの人々を見せてくれる。
青二歳

青二歳