ひこくろ

一枚のハガキのひこくろのレビュー・感想・評価

一枚のハガキ(2010年製作の映画)
4.0
新藤兼人監督が戦争に対して抱いていただろう、後悔、悔しさ、無念さ、哀しみ、怒り、憤りなんかが、にじみ出てくるような映画だった。
話はどこか飄々としていて、民話か芝居小屋での芝居を思わせる。
ある意味、滑稽で、ナンセンスな感じにも見えてしまう。
それが余計に、戦争のバカバカしさ、虚しさを浮かび上がらせている。

役者さんもたぶんみんな監督の意図がわかっていたのだろう。
この映画でしかできないお芝居を、これ以上ない形で体当たりで演じている。
中でも、大竹しのぶの演技は圧巻。
鬼気迫るっていうのは、こういうことを言うんだろうと思わされた。

戦争ってのは理不尽に人の命を奪い、人生をも奪い去る。
残された人にも大きな心の傷を残す。
それに対して、個人は無力だ。何もできない。
運命だったんだと諦めて、現実を受け入れるしかない。

でも、そんなことは本当なら許されることではないのだ。
だからこそ、監督は映画を通して、言葉にできない思いを叫んだのだろう。
これは単なる反戦映画ではない。
戦争に対する強烈な皮肉であり、監督の呪いにも似た怒りなんだと思った。
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