菩薩

せかいのおわりの菩薩のレビュー・感想・評価

せかいのおわり(2004年製作の映画)
4.3
ノストラダムスの大予言は見事に外れあんだけ危惧されていた2000年問題は何一つ社会をかき乱すこともなく、なんだかんだとこんな平凡な日常がこれからもずっと続いていくのだろうと安心とも絶望とも言える感情を抱きながらゼロ年代を歩み出そうとした先でジャンボ旅客機がでっかいビルに突っ込んで世界の景色を一変させた後の空気感。「あり得ない」と思ってもそれは現実となり、であれば目的意識を持って生きていこうにもそれはある日突然無価値な塵芥と化すかもしれないし、幸福な日々は急転直下で不幸のどん底に叩き落とされるかもしれない。風間志織が描き続けている三角ないし四・五と連なっていく緩やかな多角関係はここでも健在であるが、より付かず離れずのであるからこそ壊れない(にくい)関係性が強調される。はる子にいざその日が訪れて世界を破滅させてやろうと穴を掘り出す後半に一気にギアが加速する。そうして擬似的に形成された「せかいのおわり」の中に自ら落ちることになるはる子だが、その空間は温かみに満ちており見上げる空は青い。水槽の中で無惨にも死滅していった熱帯魚達とは違い、それでも尚生きていかねばいけない私たち。現代であればただ一重に「メンヘラ」と形容されてしまうであろうなんとなく生きていくのがしんどい私たちを、風間志織は強い抱擁で受容れる。過去作を彩った登場人物がまるでオールスターの様に再登場する、集大成であり終着点と言っていい様に思う。
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