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古都のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

古都(1963年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

好きな小説の中で5本の指に入る川端の『古都』が映画となっているとなれば、もう観ない理由がない。当然、文学と映画は性質が異なるゆえに表現にも限界があるのだろうが、原作の味わいを損なわずに京都の良さを存分に表現しているように感じた。

まずところどころに観られる京景色のモンタージュが素晴らしい。100分という時間の中で季節の移ろいが感じられ、春・夏・秋・冬とくくられてしまう中にも細かい時節の変化が映像によって映し出されていて、それを観るだけでも本作を観る価値があるように感じた。さらに京都という街にふさわしい、どこか不穏で、それでも品のある音楽が心地よい。不穏とは何か。品とは何か。京都には京都で暮らした人にしかわからない独特の雰囲気があるように思う。そのような雰囲気がこの音楽によって描かれているように感じた。

そして何より、岩下志麻さんの演技が素晴らしい。まさに和美人、京美人と呼ぶにふさわしい、彼女の演技だけで100分耐えうる力を持っている。こんなにも力強く、それでいて物腰の柔らかい役者が今までどれほどいただろうか。私にとって観るのが楽しみな数少ない女優のひとりである。
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