Baad

古都のBaadのレビュー・感想・評価

古都(1963年製作の映画)
3.3
中村登監督による川端康成の『古都』の映画化。
撮影には川端本人も立ち会った場面もあるとかで、絵柄やロケーション、着物姿の立ち居振る舞い、言葉遣い等どちらかというと外側からの描写にこだわった作り。

四月の平安神宮の桜に始まり、雪の室町の問屋街での別れにおわる京都の四季に合わせた話の運び。ドラマというよりは京都の生活と観光案内に終始している様な内容で、きちんとセリフでの説明もあるので、分かり易い。

物語と言えば、脚本の重心が、ヒロイン千重子の養父の下絵師としての仕事ぶりと千重子を育てた養父母と千重子との親子の絆、千重子・苗子の双子の姉妹と西陣の帯職人の青年との恋におかれているのが時代を感じさせる。筋書きとしてはとおり一遍のごくあっさりしたもので特に面白いという程のものでもない。

文学作品で読めば面白く感じる象徴的な表現もあるが、映像で表現した上に、セリフでも説明してくれるので、印象的を通り越して時に陳腐な感じさえする。

今とは随分と違った風情の京の町並みや壷庭のある町家の様子、上七軒界隈、当時のモダンな着物の柄あわせ等は見ていて目に心地よいが、よく出来た観光映画以上の深みは特にない様な気もする。

端正な作品であるのに、原作に忠実な映画化が必ずしも傑作とはならない典型例のような仕上りだ。

(美しい京都の四季と私 2013/1/15記)
Baad

Baad