シンタロー

学生野郎と娘たちのシンタローのレビュー・感想・評価

学生野郎と娘たち(1960年製作の映画)
3.6
中平康監督による青春群像劇。安保闘争下、不況の真っ只中で、大学生の就職率は非常に悪かった。子だくさんの時代、親の仕送りは少なく、貧乏な学生は学費の為にバイトをしながら、寝る間も惜しんで学業に励んでいた…。新劇の演出家を夢見る山本は、ノエミら女学生に出資させて制作したPRフィルムが頓挫し、責任を追及されタジタジになっていた。さらに下宿の家賃代の抵当代わりに、そこの娘婿にされてしまう。優等生カップルの奥山と晃子。2歳年上の奥山は就職に向けて勉学に励む一方、家庭不和の晃子は夜のバイトをしていた。新学長就任に伴い、授業料4割値上げとなり、騒然となる校内では、ノエミを中心に反対デモが高まる。学生たちは前にも増して生活に困窮する…。
これはなかなかの問題作。当時の様々な大学生が個性的に描かれていて興味深い。得意の群像劇で、演出も音楽もテンポがよく、基本はコメディなんですけどね…ある衝撃の転落と悲劇があまりにも酷くて…ただ作品の真意にはなってると思うんで、大切なんだけど重い。当時の時代背景、日本が抱えていた問題が招いたことなんだけど、生き難い女性像が伝わってきて、苦しかったです。
主演は中原早苗と芦川いづみ。表ヒロイン・中原、裏ヒロイン・芦川の様相。歯切れ良い台詞回しで、啖呵を切りまくる中原が実に痛快。相手が誰だろうが、全く怯むことも、媚びることもないキャラクターで、実際にいたらうるさそうだけど、作品に力を与えてる感じ。最後の締めも気持ちがいい。ショートヘアになると、より有馬稲子っぽくなる芦川、実に美しいです。あまりにも薄幸で、ショッキングなシーンもあるので、ファンには辛いはず。芝居はあまり感心したことありませんが、日活の看板女優の中では1番好きでした。ダメダメキャラで作品に笑いをもたらすのが長門裕之と岡田真澄。長門は、弟の方が男前だけど、芝居のセンスは上ですね。コメディとシリアスのメリハリが素晴らしい。あまりにも美しい岡田は、この時代の邦画では使いにくかっただろうな…日本人離れした顔立ちとスタイルに驚き。芝居は軽快でユーモアたっぷりで最高でした。デビュー間もない伊藤孝雄。町田啓太っぽい男前で、演技派の片鱗が見えます。清水まゆみ、楠侑子等々、女学生が魅力的で飽きません。
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