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レッド・サンのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

レッド・サン(1971年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

1870年頃のアメリカ西部。日米修好の任務を帯びた侍の使節団を乗せた特別列車が、強盗団に襲撃される。強盗団は手際良く事を運び、金貨を手にするが、ボスのリンクを相棒のゴーシュが裏切り、金貨と大統領への贈り物である宝刀を奪って逃走。命をとりとめたリンクは、侍の黒田と共に、ゴーシュを追うことにするが…。

主人公となるリンクに、野生味溢れるチャールズ・ブロンソン。
冷酷な裏切り者ゴーシュに、クールな二枚目のアラン・ドロン。
そして威風堂々たる侍の黒田には、我が日本の誇る三船敏郎。
日米仏の三大スター豪華な夢の共演に、007シリーズのテレンス・ヤングが監督。
宝刀を巡る争奪戦を描いた奇想天外な娯楽西部劇の秀作。

元々は三船敏郎の持ち込み企画らしいが、ポリティカルコレクトネスが叫ばれる現在の映画作りの先駆けとも言える作品となっている。
和と洋の時代劇がミックスされた映画史的にも貴重な作品だ。

西部の大平原にある駅に列車が到着する西部劇お馴染みの風景に、腰に刀を差した侍が登場する強烈な違和感。

だが、それも最初のうちだけ。
リンクと黒田の凸凹コンビのやりとりが可笑しいロード・ムービー的な珍道中が展開し、金を取り返すことしか考えないリンクが、次第に黒田の忠義を理解し、いがみ合いから友情に似た関係を築いていく。

そして話が進むにつれ、黒田のキャラクターが、西部のガンマンに劣らない存在感を放ち光輝く。
黒田を演じる三船敏郎の抑制の効いた所作、身振りが素晴らしい。
武士道を重んじる侍のあまりに頑固な生き方が、時にユーモアにもなっている。

三船、ブロンソン、ドロンの三者三様の男盛りの魅力が切り取られているが、製作陣が、誰よりも三船に敬意を払っているのが感じられるのは日本人として嬉しい限りだ。
そしてテレンス・ヤング監督が、刀vs拳銃の豪快でキレのあるアクションをメリハリのある演出で描き分け、実に上手くまとめている。

正直、道中の娼館の場面やウルスラ・アンドレスの蓮っ葉な娼婦の登場などは、作品を間延びさせている感は否めないが、むせ返るほど男臭い作品の中で、彼女らの艶っぽさが目の保養にはなっている。
個人的には娼館で黒田が「武士は食わねど高楊枝」ではなく、「据え膳食わねば男の恥」と娼婦を受け入れる三船敏郎の豪胆ぶりがお気に入り。

クライマックのコマンチ族との乱戦の中、ゴーシュを切ろうとして敢えなく返り討ちにあう黒田。
背中から斬ることは卑怯であり武士の恥、と一瞬躊躇してしまうのだ。
あくまでも武士道に生き、それに準じて死す黒田が天晴れ。
その黒田の遺志を継ぎ、ラストはリンクがゴーシュから奪い返した宝刀を侍の使節団の待つ列車に返す。
ゴーシュが隠した金の在処よりも、黒田との友情を取るブロンソンの心意気が熱い。

本作は決してイロモノに陥ることなく、見どころ満載の活劇となっている。
世界に通用する侍の信条と心意気。
敗戦国として、いまだ欧米諸国に弱腰な日本人としては、堂々と西部を渡り歩く三船敏郎に見習いたいことが多くある作品だ。
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