Newman

スパイ・ゾルゲのNewmanのレビュー・感想・評価

スパイ・ゾルゲ(2003年製作の映画)
3.0
ゾルゲの映画かと思っていたが、少なくとも半分はゾルゲ事件で検挙され死刑となった尾崎秀実の映画だと思った。
そしてこの映画の監督は尾崎秀実のシンパなのだろうとも思った。さらに、私は、資本主義を良しとする(共産主義よりはましかもくらいに思っているが)わけでもないし、もちろん共産主義に組みするわけでもないが、映画では尾崎秀実は理想の社会は共産主義でありその実現のために日本に不利な情報をゾルゲを通してソ連に渡していたとして、まるで彼こそが日本人のあるべき姿というように描かれていたのではないかと思った。確かに、日本も中国やアジアの国に対してひどいことをしてきたと思うが、100年前の当時は欧米列強といわれる国もほとんど同様だったと思う。当時は軍事力を背景に、列強の中でも食うか食われるかという状態だったはずで、その中に何とか割り込むことで日本は列強の植民地にならずに済んだのだと思う。尾崎には、特別に日本だけが悪者に映ったのだろうか。現在の環境問題で先進国は地球を汚せるだけ汚した張本人なのに、発展途上にある国が地球を汚しているから何とかせよと言っているのと同様に、イギリス、フランスのように既に多くの植民地を抱えて勝者の余裕のある国が、日本はもっと発展途上国(特に中国)の人間に優しくしなければいけないと言っていたに過ぎないと思うのだが、彼にはそうは見えなかったのであろう。日本を尾崎の思う理想国家にするために、国を売る情報をソ連に流していたというのはどうかと思ってしまった。理想を追い求めて罪人となり死刑を執行された尾崎が前面に出てしまってゾルゲが従者になっていた。監督は、実際に描きたかったのは尾崎秀実であってタイトルを無名な尾崎にするわけにいかなかったから有名な「ゾルゲ」にしたのかも知れないが。
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