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地獄変の教授のレビュー・感想・評価

地獄変(1969年製作の映画)
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芥川龍之介の原作にほぼ忠実に。且つ一本の長編映画として描くには若干、尺を稼いだ感もある。
そのため割と前半はエピソードが薄く、退屈である。
これも原作由来で、言いたいことはかなり分かり易い物語であり、説明的に展開する部分は少しもったいない。
後半への「タメ」を活かす部分も含めて余白を生む描写が欲しかったとは思うが、時代的には仕方がないとも思う。

ただ中盤以降。絵師たちが高麗(朝鮮)から渡ってきたことが示唆され。つまりは日本人の中にある民族への差別感情が明示されていたり、戦争で疲弊していたかつての日本人の思い、権力者にとっての「平安」が、庶民たちにとっての「地獄」そのものである示唆などの脚色は見事。
ましてや。コロナ禍における「緊急事態」における政治家たちの権力への執着を連日見せつけられると余計に重ねてしまう。

ラストは、巨悪へ挑む、芸術の罪と、悪によって権力へと挑む至極「真っ当」なメッセージと、燃えて燃えて燃え盛る過剰な演出に、追う者、追われる者、そしてどちらもが悲劇的に燃え尽きて行く仲代達矢と中村錦之助の徹底した顔芸演技で圧倒されて、昔の映画の情念の強さ、表現への無邪気な暴力性の発露に気持ちよくなってしまった。
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