半兵衛

野獣狩りの半兵衛のレビュー・感想・評価

野獣狩り(1973年製作の映画)
3.8
監督よりもカメラマンが自分のやりたいことをやって暴走しているのに、かえってそれが面白さに繋がってしまっているという珍妙な作品。実際須川栄三監督の演出とおぼしき部分はほとんど感じず、これがデビュー作となる木村大作の全編にわたって炸裂する縦横無尽な手持ち撮影がセミドキュメントタッチのドラマとマッチして観客に多大なインパクトをもたらすことに。

そしてこの映画のもう一つの魅力は『仮面ライダー』終了後の、品行方正とは程遠い荒くれ刑事を演じる藤岡弘のアウトローっぷりである。同じ刑事の父親に苛立ち、荒々しいベッドシーンを披露し、激しい銃撃戦まで体当たりで演じておりヒーローの呪縛から逃れるため必死に頑張っていたんだろうなと想像する。ちなみにこうした藤岡のダーティーヒーローはこの映画を経て『白い牙』、そして『特捜最前線』の桜井刑事(情報を聞き出すために容疑者を廃墟に監禁、麻薬漬けにさせるというとんでもなさ過ぎることをやってる)で完成することに。

それにしても何度鑑賞してもラストの銃撃戦は実銃撃ってるとしか思えないところがあるし、ビルとビルの間をジャンプするしとやってはいけないことばかりやってるので凄い刺激的で素敵。

伴淳三郎や稲葉義男といったベテラン俳優の刑事演技も光る。

でもこれが脚本家君塚良一氏に多大な影響を与えて『踊る大捜査線 ザ・ムービー』に結実するとは内容も作風も違いすぎてちょっと信じられない。
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