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野獣狩りのmitakosamaのレビュー・感想・評価

野獣狩り(1973年製作の映画)
3.8
藤岡弘主演の刑事ドラマ。浅草東方のオールナイトで見た気もするのだが全然記憶に無かったなぁ。

藤岡が若く血気盛んな刑事を演じる。面白いのが、父親と同じ職場で同じ刑事をやっているという設定だ。そんなことあるのかな?親子は別に配属させるだろう…という疑問はあるが…その辺のリアリズムは置いておく。
若手とベテランの刑事のバディというのはテッパンだが、親子というパターンはかなり亜流だ。

そして、従来の年齢差バディ刑事というのはベテランが若手を指導する立場だが、今作では父親が息子に対しどう接して良いか判らないというジレンマを抱えている点だ。
冒頭でバンジュン演じる父親は、酒を飲みながら息子の目を見て話そうとしない。そういうワンカットでこの2人の微妙な距離感を表しているのは実に上手い。

藤岡は相変わらず顔にラードを塗ったかのような暑苦しさだが、今作では精神的に未熟さがある役を演じる。チートキャラを演じることが多い印象なので、案外珍しいよね。

そんな青臭い若手刑事が、革命を主張する左翼の若者の集団の犯罪を追う。
東宝はこういうアカに対してはキッチリとアンチテーゼを主張する配給会社だ。当時の日本赤軍などに代表される左翼主義者の自分勝手な言い分は断固として拒否する。
今作でも革命を主張する連中は社会正義を主張しているようで、結局金目当ての誘拐事件になっていく。彼らの主張に正義などは無い。
劇中のメッセージは東宝の意思だし、ATCは勿論、松竹・東映にも無かった姿勢だ。

だが行き当たりばったりの様な若者達の犯行だが、思いのほか用意周到で刑事がみんな振り回される。姑息な犯行だが、そんな奴らにしてやられるのが焦燥感を煽る。
描写が一つ一つ丁寧で、演出に誇張が無くリアリスティックな芝居が続く。故に徐々に物語が加速して後半から俄然盛り上がってくる。

今作に渡哲也の“誘拐”との共通点を見いだすのはナルホドなと思う。銀座を舞台にした身代金引き渡しシーンは確かに既視感があるわ。恐らく両作ともにゲリラ撮影だと思われるが、それ故の臨場眼が凄いある。
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