かなみ

泥の河のかなみのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.0
子供に押し寄せるにはあまりにも強大な試練、しかしそのすべての問題の重大さに子供ゆえ気づくことは無い。

映画は強烈な死のイメージから始まる。戦争が人の命をいつまでも追い奪い取っていく。きっちゃんが忠実な兵士がごとく高らかに戦争歌を響かせるシーンは、生活感のある茶の間にアンバランスで鮮烈な悲哀を落とす。しかし、彼は戦争を知らない、誰も咎め詰問することは無い。
窓から覗くという行為が、子供の無邪気さと危うさによって残酷なまでに事実を切り抜かせる。大人たちはその真偽に限らず河の大魚に気づかない。大魚は子供の視点の優位性の隠喩だろうが、何もいいことなんて無い。ただ苦しみ傷つくだけである。

河というモチーフは汚泥にまみれ濁り腐臭を放つものとは思えないほど、街並みの中でその暮らしを支える。美しく穏やかで、静かに人々を隔てている。貧富や戦争の残り香が大阪の快活な人々の間に薄暗いやもを漂わせている。
かなみ

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