ブルーノ

カイロの紫のバラのブルーノのネタバレレビュー・内容・結末

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

 “スクリーンから飛び出した登場人物と恋に落ちる”というあらすじを観ての鑑賞だったが、自分の想像を越えるアイデアに溢れた作品で、かなりの衝撃を受けた。以下は、メモと感想を兼ねて自分の想像を列挙する。

 まず、登場人物がスクリーンから飛び出すというハプニングを、主人公以外の多くの人物が共有している点について。自分は「主人公以外は誰も客のいないレイトショーで起こる奇跡…」のような話を想像していたので、映画会社が責任問題を憂いて動いたり、マスコミが取材に来るなどといった展開には驚いた。

 次に、飛び出してくる映画がリアルタイムの作品である点。実在する人物が登場する実写映画の場合、物語が複雑にならぬよう、キャストの多くが亡くなっているような昔の映画を選択するのが無難であると思われる。しかし本作では、果敢にもリアルタイムの作品から登場人物を飛び出させ、実在する役者と役者によって演じられたキャラクターが恋人を奪い合うという離れ業をやってみせる。また、ジェフ・ダニエルズによる30年代の俳優の動き方の再現も見事である。

 最後に、「第四の壁」の特殊な打破である。スクリーンの登場人物が観客に語りかける「第四の壁」の打破は、現在ではさして珍しいものでもないが、本作ではその打破の様子を撮影するという特殊なことを行っている。映画を生の芝居のように捉え、スクリーン内の登場人物たちと観客が口論する場面は本当におかしかった。

 ここまで色々と述べてきたが、物語の舞台となった1930年代において、恐慌にあえぎながらも毎日のように映画館に通うミア・ファローの姿は、映画が決して庶民の娯楽ではなくなってしまった現代から見ると羨ましくも思える。映画が見せてくれる「夢」にうつつを抜かしてないで、きちんと「現実」を生きろ!でも、やっぱり…、なエンディングに、ウディ・アレンの映画や観客に対する愛を感じた。
 
 

 
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