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カイロの紫のバラのhasseのネタバレレビュー・内容・結末

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

演出4
演技5
脚本3
撮影4
音楽4
技術4
好み4
インスピレーション4

第四の壁を破ってのコメディとしては、ストーリーは『キートンの探偵学入門』のほうが面白いと思ったが、ラストシーンが実に感動的。

ギル(生身の俳優)とトム(ギルが演じた映画内のキャラクター。ジェフ・ダニエルズが1人2役で好演)の二人からラブコールを受けたセシリアは、二人を天秤にかけ、前者を選択する。トムは恋を諦めスクリーンのなかへ戻る。だが、ギルもまた、事件の収拾がついたとたんにセシリアに別れも告げずハリウッドへ帰ってしまっていた。ここでかなり予想を裏切られる。セシリアがギルと結ばれ辛い生活から抜けだすシンデレラストーリーかと思っていたがそうではない。「理想と現実」を天秤にかけ「現実」を選択したが、「現実」はそんなに甘くはないということか。
そのあと、呆然としつつセシリアは映画館に入って着席する。『カイロの紫のバラ』の上映は終わっていて、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアのミュージカル映画がスクリーンに映し出されている。ショットが切り替わってセシリアの顔のアップ。呆然とした無表情に、少しずつ、喜び、きらめきの色が戻ってくる。ここのミア・ファローの演技が完璧すぎるし、映画への憧れを体現する対象として、ジンジャーとフレッドのダイナミックできらびやかなダンスシーンを持ってくるのはナイスチョイス。

現実が薔薇色になると思ったのもつかの間、現実はそう甘くはないと突きつけられるが、そんな現実に一時だけ、最高の癒しと娯楽と喜びをもたらす映画っていいよねというエンドは映画ファンなら誰しも心に刺さるはず。

どうでもいいが、広い意味では、セシリアは夢女子の元祖なのかも?
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