ストレンジラヴ

私をスキーに連れてってのストレンジラヴのレビュー・感想・評価

私をスキーに連れてって(1987年製作の映画)
3.7
「バーン!」

日本のスキーシーンにその名を残すまさに「華やかなりし日本」のシンボルのような作品。頭空っぽで観ていられる安心感の反面、当時の日本経済の狂乱ぶりがそこかしこに見てとれる。三上博史演じる矢野は恐らくそこそこの私立文系→大手商社の経歴で、就職活動をしたというよりは好景気に乗っかって囲い込まれた感がプンプンするし、沖田浩之、布施博をはじめ他の男たちも女の子の気を引こうと何かとキザな言動が目につく。クソダサセーター着用は当たり前で、社内で会議をしながらタバコをスパスパ吸っている。そして26歳にして当たり前のようにマイカーを所有している。バブル崩壊、そしてソ連崩壊とともにこの世にデビューした僕からすると眩しくもあり、理解し難い光景でもあった。
映画というよりはユーミンのミュージックビデオ感が強いが、だがしかしそれがいい。何も全ての映画が重苦しくなければいけない通りはどこにも存在しないのだから。僕もスキー派で、ゲレンデを滑る際のBGMはもちろんユーミンだ。聴き惚れてリフトからグローブを落とす失態をおかしたこともあるくらいだ。ちなみにその場に原田知世はいなかった。
全体的に好景気からくる軽薄さが漂い、時にそれが片腹痛く映る場面ももちろんあった。どちらかというとおじさま世代の「俺たちの若い頃は」的な話にも映らなくはない。クソダサセーターもAD巻きもやりたいとは思わない。しかし一方で、スマートフォンひとつであらゆることが片付いてしまい、却って味気なさを抱えている僕ら世代がそんなに正しいとも偉いとも思えない。ある程度不便な方が物語は面白くなる。良くも悪くも「幸せすぎた時代があった」とそう感じた。
とりあえず…最後に一言、やっぱり原田知世はロングヘアーの方がかわいいじゃないか!