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私をスキーに連れてってのpsychedeliaのレビュー・感想・評価

私をスキーに連れてって(1987年製作の映画)
2.0
この映画を一言で表すなら, スキー版『トップガン』である。
原田知世がコケる。とにかく最初から最後までコケまくる。「内足の癖直せって言ったろ」このセリフ何回出た? 監督は内足に思い入れでもあるんですか?
『トップガン』が戦闘機のプロモーションビデオだったのと同じように, こちらはスキー, 或いはスキー場のプロモーションビデオ。だからといって, 三上博史, 石橋貴明の紛い物みたいな布施博以下のスキー場面と, 原田知世のアイドルスマイルのカットバックを5分から10分続けるのは, あれは一体何なんですか? バブルだったんだなあ。
で, そんな雪上のプリンセス原田知世と, 恋人のいない三上博史のスキー場での出会いが物語の主軸になるんだが, それじゃあ1時間で終わってしまうので, 後半にもう一山サスペンスが用意されている。だが, それを乗り越える方法がこれまたスキーなので, クドいことこの上ない。スキー好きならどうか知らんが, 雪山をこの目に見たことさえない私のような観客には最早食傷気味だ。
しかも, 主人公カップルの間には最初どうでも良い勘違いから来る溝があり, それを茶化そうとするor応援しようとする周囲がこのロマンスに碌でもない絡み方をしてくるんだが, この絡みがロマンスの成就に殆ど効果をなさない。何の伏線もなく原田知世が会社の友人に聞いた話が勘違いを取り除いてしまうので, それまでの紆余曲折は何だったんだと呆れてしまう。
何の悩みもない映画である。というか, あるはずの悩みをうっちゃってしまうことを推奨する映画である。今じゃ売れねえだろうなあ。『風立ちぬ』が「幼稚な恋愛」と言われるくらいだもんな。この映画なんか幼稚園児の恋愛だろうな。登場人物のどいつもこいつもが中学生マインドで生きてるくせに, セックスの匂い一つない。そういう近未来SFを観てるのかと思った。はたして三上博史と原田知世演じるカップルはこの物語中で一度でも寝たのかな? 70年代に大混迷に陥っていた日本映画が, 角川映画によって東映以来の復活を遂げながら, 再び失速して現在に至ったという, その理由がよく分かった。見てくれの華やかさに浮かされる人間じゃなきゃ, このノリには付いていけないよなあ。鷺沢萠の初期作品が悉くアメリカ映画讃美に傾いていたわけがよく理解できる。
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