【第69回アカデミー賞 主演男優賞受賞】
『ヒマラヤ杉に降る雪』スコット・ヒックス監督が実在のピアニストデイヴィッド・ヘルフゴットの半生を描いた伝記映画。アカデミー賞では作品賞他全7部門でノミネートされ、主演男優賞（ジェフリー・ラッシュ）を受賞した。
ジェフリー・ラッシュ、そしてノア・テイラーの演技は素晴らしいものの、映画として面白いかというとそれは別問題。起伏がなくピアノ演奏シーンに頼りすぎているような気がする。
一度は消えたものの奇跡の復活を遂げたピアニスト、この題材を選び、そして主演に実力派をキャスティングした。これだけで勝ち確だよね。ここまでやられちゃそりゃアカデミー賞とるわ。
分量的にはジェフリー・ラッシュより若年期を演じたノア・テイラーの方が多いような気がする。それか同じくらいか。それでも演技のインパクトはやはりジェフリー・ラッシュが圧倒的。統合失調症を患いながらピアノだけを頼りにする演奏家を見事に演じている。
映画としてはもう少し起伏が欲しかった。水滴など水のモチーフを用いた叙情的な演出はよかったし、なにより毒親と言ってもいい父との確執の描き方はよかった。中だるみをかなり感じたので、もう少し見せ場が欲しかったところ。
この映画の公開後、賞賛の一方で様々な批判も出たようだ。姉マーガレットは本を出版、父はこのような暴君ではなかった、むしろ良好な関係だったという。そうなるとまた話は別のような…
叙情的で感動的な演出はよかった分、脚本は改善の余地ありに感じた。映画としてはそこまで凄いとは感じないが、俳優陣の熱演（というか怪演？）は素晴らしい。惜しい作品だった。
