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海軍のmhのレビュー・感想・評価

海軍(1963年製作の映画)
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真珠湾に散華して軍神となる男の一生と、男を取り巻くほかの若者ふたりの群像劇。
文芸路線がまだ許されてた頃の東映の戦争映画。
同じ原作の松竹版「海軍」は戦中に公開されたプロパガンダ映画だけど、こちらは期待のサラブレッド北大路欣也のお披露目メロドラマ。
主人公はチートキャラ。寡黙でなにを考えているのかわからないんだけど、そんな彼がたった一度だけ心情を吐露する。この演出、昔の邦画ではちょいちょい見る。「無法松の一生」もそうだね。必殺技みたいな感じで、やたらキマる。
親友かつライバルを演じるのは千葉真一。海岸で桜島めがけて石を投げてたら、「月が三つも四つも見える!」という流れがシナリオ的にとてもうまい。
海軍兵学校に入るという夢を断たれて、売れない画家に転生。伊達メガネをかけてるやさおとこ風千葉真一はマジでレアだし、かっこいい。
ヒロイン三田佳子もさすがの演技力だった。
「母さん、おれ、海軍兵学校受けるよ」
といったときの北大路欣也の笑顔と、とまどう母親の表情がやばい。
当時の風俗、戦前の町並みの再現度がすごかった。それをさりげなく画面に納めてるのが素晴らしい。
常々、自転車ってどこに止めてたんだろうって不思議に思っていたんだけど、門の前に鍵もせずに置いてた。
レアな海軍葬のシーンは必見。
ついになってるかのようなタイトル木下恵介「陸軍」は傑作すぎてあれだけど、こちらもそうとう面白い。超埋もれててもったいない。

追記
松竹版「海軍」の公開が1943年12月8日で「陸軍」の公開が1944年12月8日。
なんと「陸軍」のほうがあとだった。
大詔奉戴日あわせでプロパガンダ映画を公開してたというのも面白い。
mh

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